まさかの1キロ5分切り!

ランニング
ロードレース大会・競い合うランナーたち

 僕たちは「ゆめりあ」の一角に荷物をまとめ、トイレを済ませてから下り坂をゆっくりとスタートラインに向かって歩いていきました。スタートラインに着いた時には、すでに多くのランナーたちが自分の場所を確保し、軽くジャンプをしたり屈伸をしたりするなど体が冷えてしまわないように、思い思いのルーティーンでさかんに体を動かしていました。
 僕たちは列の真ん中あたりに場所を取りました。後ろを振り返ると、いつの間にかランナーたちの数がどんどん増えていました。「凄い人の数だな」とか「何人くらい走るのかな」とか「速いランナーたちは前の方にいるんだぜ」とか「こんなにたくさん前に人がいたんじゃ、しばらくはスローペースだな」とか、雑談をして緊張をほぐそうとしていました。
 しばらくすると、ジュビロ磐田の中山雅史選手がスタート台に立ち、「みなさん、頑張ってください。僕も走りますから」とかなんとか言って選手を励ましてくれました。それから、ピストルを高く掲げ「よーい」と言うと、「バーン」と号砲が鳴り選手たちは一斉に走り出しました。
 僕たち駅伝メンバー6人衆はみんな同じスタートラインにいたはずなのに、走力に差があるために、走り出してすぐに多くのランナーたちに飲み込まれ、いつの間にかみんなばらばらになってしまいました。500メートルくらいまでは人が多すぎて、スピードを出すことができません。前の人に接触しないように気を遣いながら走りました。500メートルを過ぎたあたりから、徐々にランナーたちのスピードが上がり、少しずつばらけていきました。
 3キロランナーの折り返し地点までは道路が北に向かってまっすぐに延びています。カーブがまったくありません。多少のアップダウンはありますが、ほとんどフラットで走りやすい道路でした。
 沿道には地元磐田の人々が大会の小旗を振って、熱い声援を送っていました。日曜日とあって大人の人だけでなく、小学生や中学生、果ては幼稚園児まで応援に参加してくれていました。「自分とはまったく関係のない人たちなのに、こんなに懸命に応援してくれている。当たり前のことなのに……これがロードレース大会なのか!」と苦しいはずなのに、なぜか興奮と感動で胸が熱くなりました。
 1.5キロを過ぎ、早くも5キロランナーの折り返し地点の2.5キロ地点まで来ていました。前を走るランナーを一人二人と抜いていました。ランニングコンディションのよさを感じていました。風を切りながら気持ちよく走れていました。
 5キロランナーの折り返し地点から、さらに2キロほど行った所に最初の給水所がありました。給水はもちろん初めて。減速してから紙コップを取り、水を口に含みました。そのとき、次々にあとから来たランナーに抜かれてしまいました。給水に慣れているランナーはスピードを落とさずに、紙コップをつかみ、給水ができます。「これから、給水の仕方にも慣れないとな」と反省しきりです。のちのロードレース大会で、紙コップを手でつぶして飲み口を細くすると飲みやすいことを学びました。
 とうとう10キロランナーの折り返し地点が見えました。ロードコーンを回るとき、ランニングウォッチを押しました。22’43秒を表示していました。5キロの中間タイムです。1キロ4’32秒ペース。あまりのハイペースに自分でもビックリ! まさか5分を切っているとは思いませんでした。
 後半はさすがにバテました。でも、残り3キロ地点でチームで一番速いメンバーの後ろ姿が見えました。僕よりひと回りも年が下です。「あいつはここにいたのか。あいつを抜けば、恐らくチームで一番速いランナーになれる」俄然気合いが入りました。
 しばらくは背中を追いかける形が続きました。ところが、彼もバテてきたのでしょう。残り2キロ地点でようやく彼をとらえ、「先に行くぞ」とひと声かけ、抜き去りました。チームメートを抜くのは気持ちのいいものです。しかも、チームで一番速いランナーですから。その後、彼に一度も抜き返されることはありませんでした。
 ゴールまであと1キロに迫っていました。でも、ここからが地獄の上り坂です。上り坂に入ったところで急激にスピードが落ちました。走っているのにまったく足が前に出ません。何人ものランナーに抜かれました。最後は気力をふりしぼって坂道を駆け上がり、直線100メートルを走り切ってゴールインしました。ランニングウォッチは46’59秒を指していました。復路は24’16秒。1キロ4’51秒ペースでした。
 この大会での僕の10キロのタイムは46’59秒で、往路が22’43秒、復路が24’16秒でした。タイムそのものには満足でしたが、欲を言えば45分を切りたかったです。45分切りは、次回のロードレースにお預けです。でも、この大会は来る1月の初駅伝大会に向けて、僕に大きな自信を植えつけてくれました――次回に続く。

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