愛知県岡崎市、豊川市、新城市にまたがる三河山地の一つに、標高789メートルの本宮山という低山があります。その一帯は大きな杉の木が生い茂っていて、本宮山県立自然公園に指定されています。
山頂近くには三河の国一宮の砥鹿神社奥宮があり、東三河の人々の信仰の対象として親しまれています。休日にはハイキング客で溢れる人気の山ですが、平日でも登山客は少なくありません。
登山は岡崎市側のくらがり渓谷からでもできますが、豊川市側の山麓には本宮山ワーキングセンターが整備されていて、ここから表参道を登るのが一般的なハイキングコース(登山)です。
一般的な登山客は景色を楽しんだり、途中で休憩を入れたりしながら往復4時間30分くらいかけてゆっくりと登っていきます。登山客には単独登山の若者だけでなく、男女の若いカップルや老夫婦の姿も目にします。
初登山
私は40代の頃、一度だけこの山に登ったことがあります。はっきりとは覚えていませんが、頂上まで1時間15分くらいで登ったように記憶しています。その頃の私はまだ若かったし、本格的にランニングをしていましたので、歩くというよりも駆け上がるようなスピードで登りました。
ところが、上には上がいるものです。頂上に着いて初めて知ったのですが、頂上の一角に登山に要したスピードランキングが表示されている掲示板があります。それによると、速い人は1時間弱で頂上まで辿り着いているのです。驚きました。
登山ランナー
私が初めて登った時には見掛けませんでしたが、何回か登山をしているうちに、走って登っている人を何人も目撃しました。これは明らかにトレーニングをしているのです。
ある時などは、地元の高校生でしょうか? 集団で駆け上がっていく姿を目にしました。これは明らかにトレーニングの一環でしょう。トレイルランニング、つまりトレランの大会に向けてトレーニングに利用している人もいるようです。
登山決意
本宮山の目と鼻の先に、私より10歳年上の従兄が住んでいて、退職を機にこの山に登り始めたと聞いています。
「本宮山はいいぞ。俺は週3回くらい登っている。登った後で本宮の湯に浸かれば最高の気分だ」
私は温泉が好きなので、山のそばに温泉施設があるのは願ったり叶ったりです。彼のひと言が私の背中を押してくれました。
最初のアタック
最初のアタックは平成29年7月27日の夏の暑い日でした。登山口の近くにあるワーキングセンターでもらった地図を片手に、登山をスタートしました。登山道には行く先々に、1丁目、2丁目、3丁目……という案内表示がありました。地図を見ると、砥鹿神社(とがじんじゃ)奥宮が50丁目になっていました。でも、そこがゴールではなく山頂までさらに山道を登っていかなければなりません。
馬の背岩
私は28丁目にある「馬の背岩」の展望台まで順調に登っていきました。
「山頂までどのくらいかかりますか? ここは28丁目ですから半分は来ましたよね?」
「28丁目は当てにならないよ。距離じゃないからね。ここからがきつくなるから頑張ってね」
展望台で休んでいたおばあさんの言うとおりでした。「馬の背岩」を越えると、次第に登山道が急斜面に変わり、私の歩調は鈍ってきました。
山姥の足跡
40丁目に「山姥の足跡」と呼ばれる所があり、そこを越えるといったん林道に出て再び登山道に入るというコースになっていました。お清め水舎で口を漱ぎ、小休止を取った後アタックを続けました。
登山道はやがて丸太を横に敷いた階段状の道に変わりました。ここが登山道の中では最も傾斜がきつく、「もう止めようかな」と弱音を吐くほど足腰に負担がかかりました。それでも気合を入れて登り続けました。
砥鹿神社奥宮
「あらはばき神社」を越え、やっと50丁目の「砥鹿神社奥宮」に到着しました。賽銭箱にお賽銭を投げ入れ、登山の無事を祈りました。そこから少し下ると、砂利石が敷き詰められたごく普通の平坦な道になりました。左手に社殿があり、車のお祓いができるようになっていました。
頂上制覇
平坦な道の先にはつり橋があり、そこを渡ると最後の坂道になりました。15分ほどかけてとうとう頂上を制覇しました。山頂には電波塔がありました。眼下に広がる三河湾と南アルプスの眺望は最高でした。
おわりに
本宮山は比較的登山道が整備されていて登りやすいということもあり、多くの登山客で賑わっています。平日は高齢者が多く、おじいさんやおばあさんが単独で登っていたり、夫婦で登ったりしています。休日には若い登山者が多くなり、カップルも見られますし、近くに高校があるので集団でトレーニングをしていることもあります。本宮山では多くの人との出会いがあって面白いものです。
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